【今日も、おつかれさま 】Vol.17「去年の秋服」

コラム/インタビュー
 2026/10/04
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま 】Vol.17「去年の秋服」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.17

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

去年の秋服

10月に入ると、空気がすっかり秋めいてきた。

押し入れの衣装ケースを開けて、子どもの秋服を出す。

「これ、まだ着られるかな。」

去年は袖を二回折って着せていたトレーナー。


今年も着られたら助かるな、と思いながら息子に着せてみる。

袖はぴったり。

丈もちょうどいい。

「あれ?」

去年はあんなに大きかったのに。

少し前まで抱っこばかりだった気がする。

スーパーではカートに乗りたがらず、自分で歩きたがるようになった。

ごはんも、こぼしながらだったスプーンが少し上手になった。

毎日見ていると気づかないけれど、ちゃんと大きくなっている。

衣替えを続けていると、小さなロンパースが一枚出てきた。

「これはもう無理だね。」

思い切って処分しようと袋へ入れる。

そのとき、息子が近寄ってきて、そのロンパースを引っぱり出した。

自分の服だなんて覚えているはずもない。

それでも大事そうに抱えて歩き回る姿が、おかしくて笑ってしまう。

「それ、もう着られないんだよ。」

そう言いながら広げてみると、本当に小さい。

こんな服を着ていたなんて信じられなかった。

袋へ戻そうとして、手が止まる。

結局、その一枚だけは元の衣装ケースへ戻した。

来年には、このトレーナーもきっと小さくなる。

そのときなら、このロンパースも、ちゃんと「ありがとう」が言える気がした。

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