今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.16
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
どんぐりのプレゼント

秋の休日、公園を歩いていると、足元にころんと転がってきたどんぐり。
「かわいいな」
そう思って一つ拾い、家に持ち帰った。
玄関の小さな飾り皿に置いておくと、帰宅した夫がじっと見つめている。
「これ、何?」
「どんぐり。秋らしくていいでしょ」
すると夫は少し考えてから言った。
「……食べられるの?」
思わず笑ってしまった。
「リスじゃないんだから」
それから数日後。
玄関を見ると、どんぐりが3つに増えていた。
「え?」 昨日までは1つだったはず。
夫に聞くと、少し照れたように言った。
「会社の帰りに落ちてたから」
「拾ってきたの?」
「なんとなく」
まさか、あの日「食べられるの?」と言っていた本人が、どんぐりを持ち帰ってくるとは思わなかった。
「子どもみたい」
そう笑っていると、今度は娘からLINEが届いた。
「玄関のどんぐり増えてるけど、誰の趣味?」
夫婦で顔を見合わせる。
「……犯人、私たちじゃん」
いつの間にか、玄関には小さなどんぐりが並んでいた。
大人になってから、どんぐりを拾う日が来るなんて思わなかった。
でも、そんな小さなことで笑える時間も、悪くないと思った。






