【今日も、おつかれさま】Vol.5「空いた午後」

コラム/インタビュー
 2026/07/12
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま】Vol.5「空いた午後」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.5

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

空いた午後

午前中のうちに家事をひと通り終えた。

洗濯物を干し、掃除機をかけ、夕飯の下ごしらえも済ませる。時計を見ると、まだ午後1時前だった。


子どもたちは学校へ行き、夫も仕事。家の中は驚くほど静かだった。

少し前までなら、こんな時間はなかった。

幼稚園の送り迎えや公園遊び、突然の発熱。毎日が慌ただしく過ぎていた。

ソファに座り、お茶を入れる。

何かしようと思ったが、特に思いつかない。

録画していたドラマを見るでもなく、スマートフォンを触るでもなく、ただ窓の外を眺めていた。

向かいの家では、庭の手入れをしている人がいる。

郵便配達のバイクが通り過ぎる。

それだけの景色だった。

ふと、「暇だな」と思った。


以前は、自分の時間が欲しいと何度も考えていたのに。

ようやくできた自由な時間を前にすると、何をしたらいいのかわからない。

少し可笑しくなって、一人で笑った。

そのとき、棚の奥にしまっていた編みかけのポーチを思い出した。

子どもが小さい頃に始めて、そのまま何年も放置していたものだ。

久しぶりに取り出してみる。

編み方を少し忘れていたが、何段か進めるうちに手が思い出してきた。

気づけば1時間ほど経っていた。

完成まではまだ遠い。

それでも、少しだけ前に進んだ気がした。

夕方になり、子どもたちの帰る時間が近づく。

静かだった家も、もうすぐ賑やかになる。

編み針を片付けながら、次はどこまで進めようかと考えた。

そんな予定ができただけで、空いていた午後が少し楽しみになった。

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