【今日も、おつかれさま】Vol.15「はじめての敬老の日」

コラム/インタビュー
 2026/09/20
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま】Vol.15「はじめての敬老の日」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.15

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

はじめての敬老の日


九月のシルバーウィーク。

朝食を終えて新聞を広げる夫の横で、「敬老の日か」と妻がカレンダーを見つめる。

「まだ私たちには早いよね。」

そう言うと、夫も笑ってうなずいた。

孫が生まれたのは、ほんの数か月前。

写真や動画は毎日のように送られてくるけれど、「おじいちゃん」「おばあちゃん」と呼ばれることには、まだ少し照れがあった。

昼過ぎ、宅配便が届く。

箱の中には焼き菓子と、小さな足形が印刷されたカード。

『いつもありがとう』

その下には、娘の字で「○○より」と、生まれたばかりの孫の名前が添えられていた。


「まだ本人は何も分かってないのにね。」

そう言いながらも、夫は何度もカードを見返している。

妻も思わず笑った。

「でも、この子から見たら、私たちはもう、おじいちゃんとおばあちゃんなんだね。」

年を取ったというより、新しい呼び名をもらったような気がした。

送られてきた動画を二人で眺める。

眠そうな顔、小さなあくび、ぎこちなく動く手。

たった数十秒なのに、何度見ても飽きない。

「来年は歩いてるかな。」

「その次は、一緒に公園かな。」

そんな話をしているうちに、来年の敬老の日が少し楽しみになっていた。

朝は「まだ早い」と笑っていた二人だった。

けれど一日が終わる頃には、その呼び名も悪くないと思えていた。

人気の記事TOP10