今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.6
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
間違えてよかった日
スーパーへ行くつもりで車を走らせていた。
ところが曲がる道を一本間違えた。
気づいた時には少し遠回りになる。
「もう」
一人で苦笑いしながらハンドルを切った。
若い頃なら何とも思わなかったが、最近はこういう小さなミスが増えた気がする。
そのまま戻ろうかと思ったが、せっかくだからと遠回りの道を進んだ。

すると、見慣れないパン屋の看板が目に入る。
いつできたのだろう。
気になって車を止めた。
店内は小さかったが、焼きたての香りが広がっていた。
夫が好きそうな塩パンとレモンデニッシュ、自分用にくるみパンを買う。
帰宅してお茶を入れ、ひと口かじる。
思っていた以上においしかった。

夫も塩パンを見て驚いた。
「こんな店あった?」
「道を間違えて見つけた」
そう言うと、夫が笑った。
「たまには間違えるもんだな」
本当にそうかもしれない。
道を間違えなければ、このパン屋も知らないままだった。
レモンの香りが残るお皿を片付けながら、今日の遠回りは悪くなかったと思った。







