【今日も、おつかれさま】Vol.6「間違えてよかった日」

コラム/インタビュー
 2026/07/19
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま】Vol.6「間違えてよかった日」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.6

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

間違えてよかった日

スーパーへ行くつもりで車を走らせていた。

ところが曲がる道を一本間違えた。

気づいた時には少し遠回りになる。

「もう」

一人で苦笑いしながらハンドルを切った。

若い頃なら何とも思わなかったが、最近はこういう小さなミスが増えた気がする。

そのまま戻ろうかと思ったが、せっかくだからと遠回りの道を進んだ。


すると、見慣れないパン屋の看板が目に入る。

いつできたのだろう。

気になって車を止めた。

店内は小さかったが、焼きたての香りが広がっていた。

夫が好きそうな塩パンとレモンデニッシュ、自分用にくるみパンを買う。

帰宅してお茶を入れ、ひと口かじる。

思っていた以上においしかった。


夫も塩パンを見て驚いた。

「こんな店あった?」

「道を間違えて見つけた」

そう言うと、夫が笑った。

「たまには間違えるもんだな」

本当にそうかもしれない。

道を間違えなければ、このパン屋も知らないままだった。

レモンの香りが残るお皿を片付けながら、今日の遠回りは悪くなかったと思った。

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