今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.17
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
去年の秋服
10月に入ると、空気がすっかり秋めいてきた。
押し入れの衣装ケースを開けて、子どもの秋服を出す。
「これ、まだ着られるかな。」
去年は袖を二回折って着せていたトレーナー。

今年も着られたら助かるな、と思いながら息子に着せてみる。
袖はぴったり。
丈もちょうどいい。
「あれ?」
去年はあんなに大きかったのに。
少し前まで抱っこばかりだった気がする。
スーパーではカートに乗りたがらず、自分で歩きたがるようになった。
ごはんも、こぼしながらだったスプーンが少し上手になった。
毎日見ていると気づかないけれど、ちゃんと大きくなっている。
衣替えを続けていると、小さなロンパースが一枚出てきた。
「これはもう無理だね。」
思い切って処分しようと袋へ入れる。
そのとき、息子が近寄ってきて、そのロンパースを引っぱり出した。

自分の服だなんて覚えているはずもない。
それでも大事そうに抱えて歩き回る姿が、おかしくて笑ってしまう。
「それ、もう着られないんだよ。」
そう言いながら広げてみると、本当に小さい。
こんな服を着ていたなんて信じられなかった。
袋へ戻そうとして、手が止まる。
結局、その一枚だけは元の衣装ケースへ戻した。
来年には、このトレーナーもきっと小さくなる。
そのときなら、このロンパースも、ちゃんと「ありがとう」が言える気がした。







