【今日も、おつかれさま 】Vol.19「冷蔵庫の余白」

コラム/インタビュー
 2026/10/18
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま 】Vol.19「冷蔵庫の余白」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.19

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

冷蔵庫の余白

10月も半ばを過ぎ、朝晩はずいぶん涼しくなった。

仕事を辞めてから数年。子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、今は一人で暮らしている。

買い物は週に二度ほど、車で近くのスーパーへ行く。

この日も、いつものスーパーへ買い物に行き、牛乳、卵、豆腐、納豆をカゴに入れた。


野菜売り場で白菜を手に取り、少し迷って戻す。

一玉は多い。

半分に切られたものを探して、それをカゴに入れた。

一人になったばかりの頃は、こういう瞬間が少し苦手だった。

小さいパックの肉。
小さめの豆腐。
一本だけのきゅうり。

「一人分」を選ぶたびに、家族がいた頃との違いを見せられているような気がした。

けれど最近は、あまり気にならない。

家に帰り、買ったものを冷蔵庫にしまう。

棚にはまだずいぶん余裕があった。

昔は、子どもの飲み物や夫のおつまみ、作り置きの鍋まで押し込んで、扉を閉めるのにも苦労していた。

今は、どこに何があるかすぐわかる。


夕方、白菜と豚肉を小さな鍋で煮た。

残った白菜を見て、明日は味噌汁にしようと思う。

食べ切れる量を買って、食べたいものを作る。

誰かに合わせなくてもいい。

そう考えると、一人分というのも悪くない。

食後、冷蔵庫を開けてプリンを取り出した。

スーパーで一つだけ買った、少し高いやつ。

「これは一人だから、だな」

誰に言うでもなくつぶやいて、スプーンを持った。

冷蔵庫の空いた空間が、今日は少しだけ贅沢な余白に見えた。

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