今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.19
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
冷蔵庫の余白
10月も半ばを過ぎ、朝晩はずいぶん涼しくなった。
仕事を辞めてから数年。子どもたちはそれぞれ家庭を持ち、今は一人で暮らしている。
買い物は週に二度ほど、車で近くのスーパーへ行く。
この日も、いつものスーパーへ買い物に行き、牛乳、卵、豆腐、納豆をカゴに入れた。

野菜売り場で白菜を手に取り、少し迷って戻す。
一玉は多い。
半分に切られたものを探して、それをカゴに入れた。
一人になったばかりの頃は、こういう瞬間が少し苦手だった。
小さいパックの肉。
小さめの豆腐。
一本だけのきゅうり。
「一人分」を選ぶたびに、家族がいた頃との違いを見せられているような気がした。
けれど最近は、あまり気にならない。
家に帰り、買ったものを冷蔵庫にしまう。
棚にはまだずいぶん余裕があった。
昔は、子どもの飲み物や夫のおつまみ、作り置きの鍋まで押し込んで、扉を閉めるのにも苦労していた。
今は、どこに何があるかすぐわかる。

夕方、白菜と豚肉を小さな鍋で煮た。
残った白菜を見て、明日は味噌汁にしようと思う。
食べ切れる量を買って、食べたいものを作る。
誰かに合わせなくてもいい。
そう考えると、一人分というのも悪くない。
食後、冷蔵庫を開けてプリンを取り出した。
スーパーで一つだけ買った、少し高いやつ。
「これは一人だから、だな」
誰に言うでもなくつぶやいて、スプーンを持った。
冷蔵庫の空いた空間が、今日は少しだけ贅沢な余白に見えた。






