今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.9
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
誰もいない夏休み
八月の昼下がり。買い物帰りのスーパーの駐車場は、照り返しで白く光っていた。

小学五年生の息子は夏休み中だが、今日は市内の友達の家へ遊びに行っている。朝から「夕方まで帰らない」と言われ、久しぶりに一人の休日になった。
せっかくだから何かしようと思った。
映画でも見ようか。気になっていたカフェに行こうか。少し遠くまで車を走らせてもいい。
けれど結局、冷房の効いた自宅で麦茶を飲みながらテレビを眺めていた。
時計を見る。
まだ午後二時。
思ったより時間が進まない。

一人になりたいと思うことはあったのに、いざ静かな家にいると落ち着かない。
洗濯物をたたみ、冷蔵庫を整理し、意味もなく窓の外を見た。
夕方近くなった頃、スマートフォンに通知が入った。
息子からだった。
「夜ごはんいらんかも。お母さんも好きなもの食べていいよ」
短い文章に思わず笑った。
いつの間にか、自分を気遣う言葉を送るようになっている。
数年前まで、一人で留守番させることすら心配だったのに。
少し寂しい気もした。
でも、それは嫌な寂しさではなかった。
スーパーに行き、普段は買わない少し高めのお惣菜をかごに入れた。
誰かの好みに合わせなくていい夕食。
それもたまには悪くない。
夜、静かな食卓で一人分のごはんを食べながら思った。
自由な時間が増えるのは、子どもが離れていくことではなく、育っている証拠なのかもしれない。
窓の外では、どこか遠くの花火の音が小さく響いていた。






