【今日も、おつかれさま 】Vol.9「誰もいない夏休み」

コラム/インタビュー
 2026/08/09
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま 】Vol.9「誰もいない夏休み」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.9

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

誰もいない夏休み

八月の昼下がり。買い物帰りのスーパーの駐車場は、照り返しで白く光っていた。


小学五年生の息子は夏休み中だが、今日は市内の友達の家へ遊びに行っている。朝から「夕方まで帰らない」と言われ、久しぶりに一人の休日になった。

せっかくだから何かしようと思った。

映画でも見ようか。気になっていたカフェに行こうか。少し遠くまで車を走らせてもいい。

けれど結局、冷房の効いた自宅で麦茶を飲みながらテレビを眺めていた。

時計を見る。

まだ午後二時。

思ったより時間が進まない。


一人になりたいと思うことはあったのに、いざ静かな家にいると落ち着かない。

洗濯物をたたみ、冷蔵庫を整理し、意味もなく窓の外を見た。

夕方近くなった頃、スマートフォンに通知が入った。

息子からだった。

「夜ごはんいらんかも。お母さんも好きなもの食べていいよ」

短い文章に思わず笑った。

いつの間にか、自分を気遣う言葉を送るようになっている。

数年前まで、一人で留守番させることすら心配だったのに。

少し寂しい気もした。

でも、それは嫌な寂しさではなかった。

スーパーに行き、普段は買わない少し高めのお惣菜をかごに入れた。

誰かの好みに合わせなくていい夕食。

それもたまには悪くない。

夜、静かな食卓で一人分のごはんを食べながら思った。

自由な時間が増えるのは、子どもが離れていくことではなく、育っている証拠なのかもしれない。

窓の外では、どこか遠くの花火の音が小さく響いていた。

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