今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.18
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
知ってる
仕事帰り、スーパーで買ったトイレットペーパーを後部座席に載せようとして、カーディガンに気づいた。
先月、娘を車で送ったときに置いていったのだろう。
くすんだ青色で、娘が着ていそうな色だ。

「カーディガン、車に忘れてるよ」
写真を撮って送ると、すぐに返事が来た。
「それ、お母さんの」
そんなはずはないと思った。
けれど、よく見ると見覚えがある。
先月、娘と買い物に行ったとき、「たまにはこういう色も着たら?」と勧められて買ったものだった。
そういえば先日、朝が少し肌寒くて羽織り、帰りに暑くなって脱いだ。それを後部座席に置いたまま、すっかり忘れていたらしい。

「私のだった」
そう送ると、
「知ってる」
と返ってきた。
なんだか悔しい。
家に帰って、改めて羽織って鏡を見る。
自分では選ばない色だけれど、やっぱり悪くない。
写真を撮って娘に送ろうとして、やめた。
似合っているか聞くまでもない。
たぶん返事は、また「知ってる」だから。







