今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.13
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
まだ夏休み

夏休みも終わり、小学生のお兄ちゃんは学校が始まった。
家の中が急に静かになって、少しだけ寂しそうなのは、3歳の弟だ。
「にぃには?」
朝から何度も同じことを聞くので、この日は近くの公園へ出かけることにした。
まだまだ暑さが残る午後。
「セミいるかな?」
木を見上げると、元気な鳴き声が聞こえてくる。
網を持って追いかける弟。

「いた!」
「あっ、にげた!」
それでも何度も走り回っている。
やがて木の根元で、小さなセミの抜け殻を見つけた。
「とれた!」
得意そうに両手で見せてくる。
「それはセミのお洋服だね」
そう言うと、不思議そうに何度も眺めていた。
夕方、お兄ちゃんが学校から帰ってくると、弟は玄関まで走っていく。
「見て! セミ、とった!」
手のひらに乗っていたのは、抜け殻。
お兄ちゃんは一瞬きょとんとしたあと、笑いながら言った。
「じゃあ今度の休み、本物を捕まえに行こう。」
その約束だけで、弟は大満足。
夏休みは終わったけれど、弟の夏は、もう少しだけ続いているようだった。






