今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.14
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
アイスは一日ひとつ
9月になっても、まだ暑い。
洗濯物を取り込んだだけで汗がにじみ、エアコンの効いたリビングに戻ると、小学二年生の息子が冷凍庫を開けていた。

「アイス、食べていい?」
「今日もう食べたでしょ」
「食べてないよ」
「朝、食べてたじゃん」
「あれは昨日の残り」
そうだった。
昨夜、半分だけ食べて「明日食べる」と冷凍庫に戻したのだった。
一瞬、納得しかける。
いや、待って。
「でも今日食べたなら同じでしょ」
息子は冷凍庫を開けたまま考えている。
「じゃあ、昨日は半分しか食べてないから」
「うん」
「昨日の半分が今日に来たんやろ?」
「……うん」
「だから今日のアイスは、まだ食べてない」
何かがおかしい。
でも、どこから説明すればいいのか分からない。
「とにかく一日ひとつ」
そう言って冷凍庫を閉めた。

夕飯のあと。
今度は私が冷凍庫を開けた。
奥に隠しておいた、ちょっと高いアイスを取り出す。
その瞬間、背後から声がした。
「お母さん、それ今日何個目?」
振り返ると、息子が立っていた。
「……ひとつ目」
「ほんとに?」
昼間の私と同じ顔をしている。
「ほんと」
息子はじっとアイスを見つめた。
そして、さっきまでの厳しい顔をやめて、私の隣にぴたっとくっついた。
「お母さん」
「なに?」
「ひとくち、ちょうだい」
結局、そうなる。
仕方なくスプーンを渡すと、息子はうれしそうにすくった。
ひとくちにしては、ずいぶん大きかった。







