【今日も、おつかれさま】Vol.14「アイスは一日ひとつ」

コラム/インタビュー
 2026/09/13
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま】Vol.14「アイスは一日ひとつ」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.14

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

アイスは一日ひとつ

9月になっても、まだ暑い。

洗濯物を取り込んだだけで汗がにじみ、エアコンの効いたリビングに戻ると、小学二年生の息子が冷凍庫を開けていた。


「アイス、食べていい?」

「今日もう食べたでしょ」

「食べてないよ」

「朝、食べてたじゃん」

「あれは昨日の残り」

そうだった。

昨夜、半分だけ食べて「明日食べる」と冷凍庫に戻したのだった。

一瞬、納得しかける。

いや、待って。

「でも今日食べたなら同じでしょ」

息子は冷凍庫を開けたまま考えている。

「じゃあ、昨日は半分しか食べてないから」

「うん」

「昨日の半分が今日に来たんやろ?」

「……うん」

「だから今日のアイスは、まだ食べてない」

何かがおかしい。

でも、どこから説明すればいいのか分からない。

「とにかく一日ひとつ」

そう言って冷凍庫を閉めた。


夕飯のあと。

今度は私が冷凍庫を開けた。

奥に隠しておいた、ちょっと高いアイスを取り出す。

その瞬間、背後から声がした。

「お母さん、それ今日何個目?」

振り返ると、息子が立っていた。

「……ひとつ目」

「ほんとに?」

昼間の私と同じ顔をしている。

「ほんと」

息子はじっとアイスを見つめた。

そして、さっきまでの厳しい顔をやめて、私の隣にぴたっとくっついた。

「お母さん」

「なに?」

「ひとくち、ちょうだい」

結局、そうなる。

仕方なくスプーンを渡すと、息子はうれしそうにすくった。

ひとくちにしては、ずいぶん大きかった。


人気の記事TOP10