今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.10
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
なくなる前に、もう一度
休日の午後、洗濯を終えて近所のコンビニへ向かった。
冷蔵庫の中はほとんど空だったが、自炊をする気分でもなかった。
店内を一周したあと、お弁当の棚の前で足が止まる。

よく買っていた、ねぎ塩チキンと雑穀ごはんのお弁当だった。
一人暮らしを始めた頃から何度も食べてきたお気に入りだ。
何となく手に取り、レジへ向かう。
会計を済ませると、店員が言った。
「このお弁当、今日で販売終了らしいですよ」
思わず顔を上げた。
「そうなんですか」
「私も結構好きだったんですけどね」
店員が少し残念そうに笑う。
「私もです」
そう答えると、二人で小さく笑った。
それだけの会話だった。

車に乗り込み、エンジンをかける前にレシートをダッシュボードへ置く。
お気に入りだったものがなくなる。
考えてみれば、学生の頃から通っていた店も、よく買っていたお菓子も、いつの間にか姿を消していた。
変わらないように見える毎日も、少しずつ変わっているのかもしれない。
家に帰り、お弁当のふたを開ける。
最後の一個だったかもしれないと思うと、いつもと同じ味なのに少しだけ特別に感じた。
食べ終わる頃には窓からやわらかな光が差し込んでいた。
明日からまた新しい一週間が始まる。
でも今日くらいは、この味をゆっくり楽しもうと思った。







