中津に引っ越してきた、ちょっとキザでどこか抜けている58歳の自称イケオジ・涼介。新しい街で名所や名物を巡りながら、中津の魅力を発見していく、笑えるショートストーリー。
第1話|中津城、主役はどっち?

中津城をバックに、スマホを構える男がひとり。
「うん、今日も仕上がってるな、俺」
58歳、涼介。自称イケオジ。国宝級イケメンの山中柔太朗にも負けていないと、本気で思っている。
「せっかく中津城に来たんだ。歴史も押さえておかないとな」
中津城は、1588年に黒田官兵衛(孝高)が築城を始め、のちに細川忠興が完成させた城。日本三大水城のひとつに数えられ、かつては海や川の水を巧みに利用した天然の堀に守られていた。
現在の天守は昭和39年に建てられたものだが、石垣には築城当時の面影が残る。黒田氏と細川氏、二つの時代の石垣が見られるのも、中津城の興味深いところだ。
涼介は石垣を眺めながら、腕を組んだ。
「400年以上の歴史か。やっぱり本物は、年月を重ねるほど味が出るんだな」
そして、さりげなく自分の顎をなでた。
「俺も、いい感じに仕上がってきたしな」

ひと通り城を眺めたところで、いよいよ記念撮影。
右へ一歩。左へ二歩。顎を少し上げて、目線は遠くへ。
「よし。完璧」
撮れた写真を確認する。
そこには、画面いっぱいに映る涼介の顔。
肝心の中津城は、隅っこにちょこんと写っていた。
「……城、ちっさ」
涼介は写真を見つめ、しばらく考えた。
「まあ、仕方ないか。主役が二人いると、カメラも迷うよな」
そう言って、もう一度写真を拡大した。
もちろん、拡大したのは自分の顔だった。
中津城を再発見するはずが、今日も自分の魅力を再確認して帰る男だった。








