今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.7
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
勝手に決めないで
休日の午後、スーパーへ買い物に出かけた。
野菜や牛乳をカゴに入れ、最後に総菜コーナーへ向かう。
そこでふと手が止まった。
揚げたてのアジフライだった。

好きだけれど、一人分を作るのは面倒で、家ではほとんど食べない。
少し迷った末にカゴへ入れた。
レジへ向かおうとした時、近くにいた年配の女性二人の会話が聞こえた。
「一人だと、もう揚げ物なんてしないわよね」
「そうそう。面倒だし、そんなに食べないし」
思わず心の中でうなずく。
そのまま帰宅し、アジフライを皿に移した。
せっかくだからと思い、キャベツも刻む。

さらに冷蔵庫に残っていた豆腐で簡単なみそ汁まで作った。
食卓に並べてみると、思ったより立派だった。
テレビをつけようとして、やめる。
静かなまま食べてみた。
サクッという音が思った以上に心地いい。
ふと、さっきの会話を思い出した。
「一人だから」
最近、自分も何かとそう考えていた気がする。
一人だから旅行はいいか。
一人だから大きなケーキは買わない。
一人だから面倒な料理はしない。
でも考えてみれば、誰かに決められたわけではない。
全部、自分で決めていたことだ。
アジフライを食べ終える頃には、少しおかしくなっていた。
今度の休みは、気になっていたケーキ屋へ行ってみよう。
ホールケーキを買うわけじゃない。
ショートケーキを一つだけ。
それでも十分だ。
空になった皿を流しに運びながら、次の休日の予定がひとつできた。
それだけで、いつもの台所が少し明るく見えた。






