今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.5
どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...
空いた午後
午前中のうちに家事をひと通り終えた。
洗濯物を干し、掃除機をかけ、夕飯の下ごしらえも済ませる。時計を見ると、まだ午後1時前だった。

子どもたちは学校へ行き、夫も仕事。家の中は驚くほど静かだった。
少し前までなら、こんな時間はなかった。
幼稚園の送り迎えや公園遊び、突然の発熱。毎日が慌ただしく過ぎていた。
ソファに座り、お茶を入れる。
何かしようと思ったが、特に思いつかない。
録画していたドラマを見るでもなく、スマートフォンを触るでもなく、ただ窓の外を眺めていた。
向かいの家では、庭の手入れをしている人がいる。
郵便配達のバイクが通り過ぎる。
それだけの景色だった。
ふと、「暇だな」と思った。

以前は、自分の時間が欲しいと何度も考えていたのに。
ようやくできた自由な時間を前にすると、何をしたらいいのかわからない。
少し可笑しくなって、一人で笑った。
そのとき、棚の奥にしまっていた編みかけのポーチを思い出した。
子どもが小さい頃に始めて、そのまま何年も放置していたものだ。
久しぶりに取り出してみる。
編み方を少し忘れていたが、何段か進めるうちに手が思い出してきた。
気づけば1時間ほど経っていた。
完成まではまだ遠い。
それでも、少しだけ前に進んだ気がした。
夕方になり、子どもたちの帰る時間が近づく。
静かだった家も、もうすぐ賑やかになる。
編み針を片付けながら、次はどこまで進めようかと考えた。
そんな予定ができただけで、空いていた午後が少し楽しみになった。






