中津に引っ越してきた、ちょっとキザでどこか抜けている58歳の自称イケオジ・涼介。新しい街で名所や名物を巡りながら、中津の魅力を発見していく、笑えるショートストーリー。
第2話|中津からあげの前では、誰も無力

「からあげの聖地か。そこまで言うなら、確かめないとな」
中津の街を歩く涼介、58歳。今日も自信に満ちた表情だ。
中津市には、約60店舗ものからあげ専門店があるといわれている。かつて養鶏が盛んだったこともあり、からあげは地元の食卓に深く根付いてきた。
しかも、店ごとに味が違う。醤油や塩をベースに、ニンニクやショウガを効かせた秘伝のタレ。骨付き、骨なし、もも肉、むね肉と、部位によっても楽しみ方はさまざまだ。
「なるほど。これだけライバルが多いと、どこも腕を磨くわけだ」
涼介は妙に納得した。
「イケオジの世界も同じだな。日々の努力が大事ってことだ」
そして、揚げたてのからあげを前に腕を組んだ。
「ふっ。俺くらいになると、食べ方にも品格が出るんだよ」
まずは一個、優雅につまむ。

カリッとした衣の中から、熱々の肉汁がじゅわっと広がる。
「うまっ!」
思わず声が裏返った。
「いや、今のは……想像以上だっただけだ。もう一個、確認しよう」
二個目。三個目。
気づけば、さっきまでのキメ顔はどこへやら。目の前のからあげに全集中している。
最後の一個を食べ終え、満足げな涼介。
「ふっ、からあげごときで取り乱す俺じゃない」
そう言いながら、空になった袋をのぞき込んでいた。
「……あと300グラムは、いけるな」
涼介の足は、早くも次のからあげを求めて動き出していた。
イケオジも、からあげの前では無力。












