【今日も、おつかれさま 】Vol.10「なくなる前に、もう一度」

コラム/インタビュー
 2026/08/16
※記事内の情報は取材当時のものです。
【今日も、おつかれさま 】Vol.10「なくなる前に、もう一度」

今日も、おつかれさま ― 暮らしの中の小さな物語 ― Vol.10

どこかの暮らしに、そっと寄り添う物語...

なくなる前に、もう一度

休日の午後、洗濯を終えて近所のコンビニへ向かった。

冷蔵庫の中はほとんど空だったが、自炊をする気分でもなかった。

店内を一周したあと、お弁当の棚の前で足が止まる。


よく買っていた、ねぎ塩チキンと雑穀ごはんのお弁当だった。

一人暮らしを始めた頃から何度も食べてきたお気に入りだ。

何となく手に取り、レジへ向かう。

会計を済ませると、店員が言った。

「このお弁当、今日で販売終了らしいですよ」

思わず顔を上げた。

「そうなんですか」

「私も結構好きだったんですけどね」

店員が少し残念そうに笑う。

「私もです」

そう答えると、二人で小さく笑った。

それだけの会話だった。


車に乗り込み、エンジンをかける前にレシートをダッシュボードへ置く。

お気に入りだったものがなくなる。

考えてみれば、学生の頃から通っていた店も、よく買っていたお菓子も、いつの間にか姿を消していた。

変わらないように見える毎日も、少しずつ変わっているのかもしれない。

家に帰り、お弁当のふたを開ける。

最後の一個だったかもしれないと思うと、いつもと同じ味なのに少しだけ特別に感じた。

食べ終わる頃には窓からやわらかな光が差し込んでいた。

明日からまた新しい一週間が始まる。

でも今日くらいは、この味をゆっくり楽しもうと思った。

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