イラスト・矢野想子
以前、高峰秀子さんを日本一の女優と記した。その気持ちはもちろん不動であるが、では山田が二等賞であるかといえば、さにあらず。僅差も僅差、お二人を一等賞としたい。山田もまた、大にして名女優である。 私が生まれた町、大分県中津出身の男に、池永浩久という大プロデューサーがいた。日本活動写真株式会社を設立し、日活京都の撮影所長をしていた。彼がまだ十二歳の山田五十鈴を見つけ出したのである。山田は大部屋に入らず、のっけから個室を与えられた。池永がその才能を見抜いていたのである。 名作「浪華悲歌」(溝口健二監督)が十九歳の時であるから、凄いの一言。筋は、父の横領した500円を返すために、勤めている薬問屋の社長の妾になる。次は、兄の大学へいく学費200円のために株屋の進藤英太郎を美人局(つつもたせ)する。露顕し、恋人を失い、家族も皆、汚いものを見るかのごとく邪慳になり、彼女を追い出す。途方にくれて夜の川面を見詰めている。自殺するのかと思いきや、グイッと顔を上げて、「ワイは不良や」と、橋をグングン盛り場のほうへ渡っていく。その腹を決めた、アップの顔が素晴らしい。そやそや、何をやってでも、生きていくんやと、拍手を送った。 「鶴八鶴次郎」(成瀬巳喜男監督)の長谷川一夫との真剣勝負、芸合戦も素晴らしい。「猫と庄造と二人のをんな」(豊田四郎監督)、姑の浪花千栄子に家を追い出されても、なんとか亭主森繁久弥の愛だけは取り返そうとする、健気な女房を巧演。「東京暮色」(小津安二郎監督)での、夫笠智衆と娘たちを棄てて男に走った自堕落な母親もGOOD。打って変わって、「暖簾」(川島雄三監督)での、勝気で商売を盛り上げていく女房もOKでした。 最高作は何と云っても、「流れる」(成瀬巳喜男監督)、山田、田中絹代、高峰秀子、杉村春子、岡田茉莉子、栗島すみ子の六大女優の共演。傾きかけた芸者置屋の女将が山田。山田の強気弱気、憂い顔、芸の顔。三味線を自ら弾き、清元を唄います。女優に必要なすべての演技力がこの映画の中に凝縮されていた。

























