イラスト・矢野想子
高峰秀子、山田五十鈴、京 マチ子、田中絹代、杉村春子、乙羽信子と並ぶ、日本七大名女優。幼い頃、「丹下左膳」(松田定次監督)を観た。大河内傳次郎版ではなく、阪東妻三郎版である。伝法な櫛巻お藤に淡島が扮していた。これまで、多くの女優が演じてきたが、淡島が一等賞である。何がって、お色気、肉置き、啖呵、女度胸、ちびっ子は見惚れてしまった。強いバンツマも、淡島の前ではからっきし弱かった。男っていうのは、女に弱い奴が魅力があるねぇ。 「にごりえ」(樋口一葉原作、今井正監督)の第三部に女郎のお力の役で出ている。これがまた色っぽい、大工の宮口精二が通い詰めるが、金の切れ目が縁の切れ目、ついには宮口にノミで刺され、無理心中させられるのだが、無理はない。彼が狂うだけの艶な色香がスクリーンの外にまで漂っていた。 「早春」(小津安二郎監督、脚本野田高梧)での倦怠期の妻の素晴らしいこと。夫池部良との子を一歳くらいで亡くしている。以来、子は授からず、池部は会社が終わっても、マージャンに呑みごと。たまの休みも、会社の連中とピクニックに行き、女房を構わない。ついには、同じ課の岸恵子と池部は不倫をする。家を空けたり、カッターシャツに口紅が付いていたり、その度に実家の母浦辺粂子を訪ねる。母はおでん屋をやっており、元気なく戻ってくる娘を、男はそんなもんだよとか、あんたのお父さんはもっとひどかったよ、とか云いながら励ます。この浦辺と淡島の母娘のシーンが凄くよろしい。娘っていう奴は嫁いでも母親の前ではいつまでもネンネなんですね。 彼女の最高作品は誰が何と言っても、「夫婦善哉」(織田作之助原作、豊田四郎監督)の蝶子役。蝶子は織田の姉、千代子がモデルと云われている。ぐうたらで甲斐性なしの亭主に森繁久弥先生。自分がヤトナをしながら貯めたお金も全部、他の女に貢いだり、呑んでしまったり、ほんにつまらぬ男であるが、結局甘えられるとつい許してしまい、添うていく。この手のいい女がこの日本から居なくなりましたねえ。名女優、まだご健在、ますますお元気で。

























