イラスト・矢野想子
日本一の名女優にして大女優は誰かと云えば、非常に悩むところである。山田五十鈴か、京マチ子か、原節子か、高峰秀子か。名だけで云えば、多くの上手い女優さん達がいらっしゃるが、その上に大女優となれば、当然、主演映画が多くなくてはならない。先述の四大女優は、いずれも遜色がない。美人度も、演技力も、感情移入度も、しかりである。では、何ゆえに高峰秀子か。それは、役柄の幅が広く、その成りきり度が僅差ながら、他の三名に優ると確信するからである。 まず「カルメン故郷に帰る」(木下恵介監督)、この時、高峰27歳、天才子役からスタートし、そのキャリアからして、すでに大女優の域に達していた。偉ぶることなく、故郷に変な錦を飾るストリッパーの役を演じた。天真爛漫、ノーテンキに、成りきっていた。 名作「雁」(豊田四郎監督)、貧しい娘、騙されて高利貸し東野英治郎の妾になる。いつも家の前を通る帝大生芥川比呂志に恋をする。東野との確執、東野の妻浦辺粂子の悋気、芥川への思慕、若い娘の胸中を真演した。 打って変わって、「二十四の瞳」(木下恵介監督)、若く美しい大石先生を溌剌と演じる。戦争を挟んで後の再会、皆大人になり、何人かは欠け、田村高広は戦争で失明し、高峰も夫を亡くしていた。過酷な人生の歳月の去来を滋味深く巧演した。老け役もお見事でした。 最高作は、「浮雲」(成瀬巳喜男監督)、外地で知り合った森雅之との腐れ縁である。お互いに、他の異性と引っ付いては別れ、また求め合う。米兵のオンリーにまで堕ちながら、森に云う。 「男は見栄坊で、移り気で、気が小さくて、お酒の力で、大胆になって、、、」。森が返す、「あれからは、蛇足だった、、、」。男女とは、夫婦もまたしかり、いつからが蛇足なのだろうか。日本一の映画と云って過言ではない。 「華岡青洲の妻」(増村保造監督)、青洲役市川雷蔵の母役。高峰の美しさに憬れて嫁いでくるのが若尾文子。雷蔵を挟んで、姑と嫁の確執である。若尾が憬れるだけの気品とりりしさに溢れていた。 高峰秀子、磐石の日本一の天才女優である。

























